2010年8月15日日曜日

「非IT屋」が提供するクラウドサービス

今年2010年4月、Bank of AmericaがSaaSアプリケーションのマーケットプレイスの提供を始めた。Bank of Americaは銀行であり、いわゆる「IT屋」ではない。このような「非IT屋」が提供するSaaSやPaaSについて調べてみたので、3つほど例を紹介する。なお、彼らはこれらのサービスで直接利益を得る気はなく、顧客ロイヤリティ向上のためにサービスを提供しているようだ。

●Bank of Americaの「MyBusiness Center Solutions Store」
Bank of Americaは、今年2010年4月から「MyBusiness Center Solutions Store」と呼ばれるSaaSアプリケーションのマーケットプレイスを提供している。中身はSugerCRM、Google Apps、WordPress、Microsoft Hosted Exchangeなどの他社SaaSアプリの再販サイトで、直販に比べて特別な値引きなどはない。またこのマーケットプレイスを経由して他社SaaSと顧客との取引が成立したとしても、いわゆるアフィリエイト中間マージンなどを取らないため、Bank of Americaには金銭的な利益は全くない。ただしBank of Americaの顧客であれば各SaaSベンダと個別に契約をしなくても、ショッピングカートに入れて支払いを済ませれば、Bank of AmericaのオンラインバンキングのIDとパスワードを使って様々なSaaSアプリを利用することができる。顧客が便利になるため、Bank of Americaの顧客であることのロイヤリティが高まる、というわけだ。このアイデアはコンサルティング会社THINKstrategiesの提案で、システムはTHINKstrategiesのシステム開発パートナーRenovatrix SolutionsによってEtelosのPaaSを使って構築されたもの。なお、EtelosはSaaSアプリケーション開発のためのプラットフォームを提供するPaaSを開発・販売する中堅のソフトウェア開発の会社だ。
もともと2000年からBank of Americaは顧客向けに、会計管理のWebサービス(支払、融資、電信送金、購買など)を提供していた。これは当時スタートアップだったWeb系ソフト開発会社のAribaが構築したものだ。なおAribaは現在、企業向けSaaSアプリケーションプロバイダとして事業展開している。

[参考]
Bank of America Corporation - MyBusiness Center Solutions Store
http://www.mybusinesssolutionsstore.com/

THINKstrategies, LLC
http://www.thinkstrategies.com/

Etelos, Inc.
http://www.etelos.com/

Ariba, Inc.
http://www.ariba.com/

●米国公認会計士協会の「AICPA Store」
American Institute of Certified Public Accountants (AICPA; 米国公認会計士協会)は、現在約35万人の公認会計士が所属する巨大な組織だ。2009年4月、AICPAとその子会社CPA2Bizおよびオンライン会計アプリ開発のIntacctは、中小企業のための会計業務のパフォーマンス改善にクラウドコンピューティングを取り入れようと、公認会計士に特化したオンデマンド会計管理アプリおよび財務管理アプリの共同開発を行うことを発表した。AICPAはIntacctを推奨する会計アプリケーションプロバイダに指定し、同時にCPA2BizをIntacctの推奨販売店に指定。完成したSaaSアプリケーションは、「AICPA Store」と呼ばれるCPA2Bizの運営するWebマーケットプレイスで販売される。AICPAの会員になっている公認会計士は、AICPA Storeを通してIntacctの提供するSaaSアプリを会員特価で購入することができる。AICPAとCPA2Bizは販売中間マージンは受け取らず、このサービスによって直接利益を出すことは考えていない。公認会計士がAICPA会員であることのロイヤリティの向上が目的だ。一方Intacctも、AICPAおよびCPA2Bizの会計ベストプラクティスに関するノウハウを学ぶこと、および「AICPA公認アプリ」というお墨付きをもらうことを目的としている。

[参考]
AICPA - AICPA Store
http://www.cpa2biz.com/

Intacct, Inc.
http://www.intacct.com/

●FedExの「FedEx Web Services」
FedExは主にEコマースサイトの開発者向けに、無料で「FedEx Web Services」と呼ばれるPaaSを提供している。配送伝票の発行、トラッキング、送料計算、住所の実在確認、返品集荷手配、オンラインプリントなど、FedExのデータセンタでホスティングされているシステムの様々な機能が利用でき、公開されたWebサービスAPIを介して自由に自社開発のEコマースサイトなどに組み込むことができる。通常、中小企業のマーケティング部門が自社のEコマースサイトを立ち上げたところで、商品の配送は従来のままの仕組みを使うケースは多い。しかし受注、配送手配、到達確認や返品処理など、意外と煩雑な業務がそのまま残ってしまうことになる。顧客はFedEx Web Servicesを使えば、ほとんど追加投資をすることなく、それらの面倒な処理をほぼ自動でかたづけることが可能になる。FedExとしても既にあるものを公開しただけであり、ほとんど追加投資をすることなく顧客ロイヤリティを向上させ、競合のUSPSやUPSとの競争力を高めることができるのだ。なお、このFedEx Web Servicesを含め、FedExのシステムはほぼ全てが自社開発である。

[参考]
FedEx, Inc. - FedEx Web Service
http://www.fedex.com/us/webservices/index.html

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